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25話. 先に作ったのは誰か

مؤلف: 6jay
last update تاريخ النشر: 2026-09-24 18:40:36

「わかった」

蓮は玄関から身を引いた。

紗月はスーツケースを引き、その前を通り過ぎた。引き止められると思っていたわけではない。ただ、何か月もかけて債権や建物を買い集めた人が、こんなに素直に道を開けるとも思わなかった。

「車は用意してある。君が行きたい場所まで送るだけだ。運転手も嫌なら、タクシーを呼ぶ」

「最後まで、選ばせているふりですか」

「そう聞こえても、返す言葉はない」

蓮は弁解しなかった。

だからといって、紗月の怒りが軽くなるわけではなかった。

バッグの中で電話が鳴った。美緒だった。

――紗月、ブリエがうちのカプセルラインと同じものを出してきた。ルックブックの情報解禁がたった今だったんだけど、シルエットが似てる程度じゃない。縫い目も裏地の配色も同じ。

玄関の扉を開けたまま、紗月は尋ねた。

「サンプルは?」

――第3室に鍵をかけて保管した。工場と外注先のメールも保存してる。向こうの先行予約は3日後。

「誰にも原本を送らないで。今から行く」

電話を切ると、蓮が言った。

「ブリエは、鷹宮が先月買収した会社だ」

「買収を知っていたんですか?」

「それだけだ。デザインの流出は、今知った」
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  • 30日後には、他人に戻るはずだった   44話. 会議室を出た一ノ瀬社長

    蓮はバッグを置き、濃いネイビーの上着を脱いで、ソファの背に掛けた。昼間、会議室ではあれほどきっちり線を引いていた男が、この家に入った途端、少しずつ気を緩めていく。その変化には、何度見ても心を奪われた。「メニューは決まった?」ネクタイの結び目を緩めながら、蓮が尋ねる。低く落ち着いた声が、静かなリビングに響いた。「テーブルに用意してあります」紗月が示した先には、和食をきれいに詰めた重箱と、熟した桃の皿が並んでいた。桃は皮をむき、食べやすい薄切りにしてある。指に果汁がつくのをひどく嫌がる紗月のため、蓮が一緒に暮らし始めた頃から、何度もそうしてくれた。今日は紗月が、彼の代わりにその手間をかけたのだった。蓮は食卓ではなく、キッチンカウンターにもたれている紗月の前へ来た。腕1本分の距離まで近づく。「今日の会議では、ずいぶん鋭かったな。予算を3,200万円に絞ったうえで、商標の優先購入権まで守り切るとは思わなかった」「投資家の一ノ瀬蓮が簡単に引き下がらないのは、わかってますから。武器はきちんと用意しないと。どうしました? 取締役の皆さんの前で、桐谷社長にやられてご不満?」からかいながら、紗月は指先で彼のネクタイに触れた。蓮の目がその細い指を追い、きちんとまとめた髪の下、白いうなじへと移る。「まったく」さらに1歩、近づいてきた。紗月の腰が、カウンターの縁に触れた。後ろへは下がれない。その距離で、蓮の手が頬をかすめ、髪を留めていたピンをそっと抜いた。ほどけた髪が、肩へ落ちる。彼のウッディな香りが、近くなった。「むしろ、満足してる。惚れた女が会議室を仕切って、数字で俺を打ち負かすところを見るのは、思った以上に刺激的だった」「……前の一ノ瀬社長は、そんなこと言わなかったのに。意地悪になったね」「君に教わった」熱い手が紗月の脇をたどり、肋骨のあたりで止まった。薄いワンピース越しにも、指が動くたび、その形までわかる気がした。紗月は身を縮める代わりに、ネクタイをつかんで蓮を引き寄せた。「昼間、あんな真顔で私の提案を却下するって脅した罰です」「却下じゃない。合理的な修正の要請だよ、桐谷社長」息とともに、蓮が下唇を強くはさんだ。互いを求める気持ちは、もう目を見ればわかった。呼吸の変化だけで、どこまで近づきたいのか伝わっていた。隙間なく唇が

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